松原良香コラム“サッカー人”

松原良香コラム“サッカー人”

マリオ・レボーショさん

第85回 マリオ・レボーショさん

今回紹介するのは、マリオ・レボージョ。彼はウルグアイの代表チームで、タバレス監督のサポートをしている。先日、ウルグアイに行ったときに、エージェントのグスターボの繋がりで知り合った人物。グスターボから、ムスレラのエージェントをやっているロドリゴを紹介してもらって、そのロドリゴがマリオと仲が良いということで知り合うことができた。

僕がマリオを通して最も知りたかったことは、人口300万人余のウルグアイが、なぜあんなに強いのかということだった。2010年の南アフリカワールドカップでベスト4。2011年のコパアメリカでは優勝している。どうしてそんなに強いのか、非常に関心があった。もちろん2014年、ブラジルのワールドカップでどうなるかという点にもその関心は繋がっている。

それをマリオに話したら、それじゃあということで、いろいろと紹介してくれることになった。彼はタバレスという素晴らしいウルグアイ代表監督の右腕で、現場でサポートしているからね。

マリオは元サッカー選手で、ワンダーというウルグアイでは強豪のチームに所属していた。そこでの監督がタバレスだったから、選手時代から含めると、もう30年の付き合いということになるそうだ。選手を引退したあと、2006年にタバレスから声がかかり、そこからは指導者として、もう8年になる。

タバレスから話がきたときはもう、即決したらしい。そこからは指導者としてタバレスからさまざまなことを学び、今ではもう、何も言われなくてもタバレスが何をしたいか感じることができるくらいになっているそうだ。

ウルグアイのサッカーが、なせ強いかについての話に戻ると、まず、ウルグアイのサッカーは、協会に潤沢な資金力があるわけではないし、ウルグアイの人口が少ないのもあって、日本みたいに個を高めることを目的としたトレセン制度というものがない。そういう環境でどうして強くなるのかというと、クラブが選手を育てているからだ。

ウルグアイには5歳から12歳までの「バビーフットボール」というものがあり、意味はベビーフットボール。ウルグアイでは訛って「バビーフットボール」と言うが、つまり、そこで「ベビー世代」のサッカーが始まる。あちこちにグランドがあり、そこで子供たちがサッカーをする。週末になると試合があって、母親たちがワイワイ応援する、という環境がある。

そこで上達した子どもたちが、次に各クラブチームに行く。そこで次の段階のサッカーがスタートする。結果的に育成組織になっているわけだね。ジュニアユースからスタートすると、15歳以下だとか、そのなかでの代表チームがあって、技術が高い子どもはそこに入ることになる。ウルグアイはチーム数が少ないから。

そうすると、結果的に15歳のウルグアイ代表、17歳のウルグアイ代表、20歳のウルグアイ代表と、だいたい同じ選手が選ばれていくことになる。日本も、僕と松波がもう25年も知っているように、入れ替わりはあまりないほうだけれど、それでも人口が多いから、ウルグアイよりは入れ替わりがある。ウルグアイは僕と松波のような関係の選手がほとんどだから、代表チームで試合をやるときに、例えばスアレスがこの試合にはいない、となっても全然あたふたしない。みんな10代の頃から一緒にやってるから、誰がいて、誰がいなくて、というようなことで左右されないほどお互いを理解できていて、信頼できているメンバーが揃っている。それがウルグアイの強さだろう。

あと、日本の場合は監督から強化のスタッフまでが揃って香川の状態を見に行く、本田の状態を見に行く、ということができるが、ウルグアイは資金面の問題からそういうことができない。じゃあどうするかというと、すぐ電話をする。僕もウルグアイではみんなに「What's up?」をやったほうがいいぞと言っていた。

「What's up?」というのは、電話をして「最近どうだい」と聞くことなんだけれど、スアレスに電話をかけてスアレス本人が電話に出られなかったら、そこで切るのではなく、奥さんと話したり、子供と話をしたりする。つまり、そのくらいの仲ということ。もうサッカー界全体がファミリーのようになっていて、お互いを本当によく知っているし、経験値も高い。それもウルグアイのサッカーの強さの1つだ。例えばフォルランが退場して、10人で試合をしなければいけない場合も、そのときはどういうふうに闘えばいいかはもうわかっている。そういうタフさは日本にも他の国にもない、ウルグアイならではの特徴の1つだろう。

他にもあげるとすれば、ウルグアイのサッカーは、基本的にはロングボールが多い。しっかり守って、ロングボールを出すというスタイルだから、そうすると、サッカーのいちばんの醍醐味でもあるけれど、フットサルに近いくらい、攻守においてゴールを奪う、ゴールを守るというシーンが頻繁に出てくる。そうすると自然とディフェンダーは、ロングボールが入ってきた時に対応できるよう、体格が大きくフィジカルが強く、激しいプレーに対応できる選手が育つ。一方、ロングボールがきたら、中盤の選手には追いつけないから、前線の選手は、基本的には1人で、2人、3人を抜いていくような、仕掛ける選手というのが育つということになる。スアレスとかカバーニとか、フォルランなんかは、みんなそういうタイプの選手だ。

環境が悪いというマイナス要素も、ウルグアイのサッカーにはプラスに働いていると、マリオは話していた。グランドは穴だらけでボコボコなのに、選手たちは誰一人、文句など言わずプレーする。そういうグランドで、もう小さい頃からやっている。人工芝がウルグアイには1面しかないことから考えると、日本のようなきれいな人工芝がたくさんある環境は、恵まれ過ぎているともいえるだろう。

ウルグアイは、天然芝か土のグランドが普通。天然芝といってもボコボコたったり芝がやたらと深かったりするわけだけれど、お金がないから、そういうグランドでサッカーをするしかない。ただ、それが小さい頃からだから、もうボールがイレギュラーに跳ねても、そのときはどうすればいいか、どうコントロールすればいいかというテクニックが身につく。そういった技術が磨かれて大人になっていく。

監督もそういう環境が悪い中でやらなければいけないし、パオロ・モンテーロのような、セリエAで何億、何十億稼いだ選手でも、ウルグアイに戻ったら、ボロボロの練習着でトレーニングをする。そういうハングリーさが強さの秘訣でもある。ウルグアイの選手は基本的に、自分がある年に得点王とったら、じゃあもう次はいいという考え方はしない。たとえ得点王とっても、次の年はもっと点をとってまた得点王になってやるというような貪欲さ、たくましさがある。

こういったウルグアイのサッカーについて、会った日にマリオがとても詳しく話してくれたのだけど、そのあと「もしよかったら明日、代表施設を案内するから来ないか。タバレス監督もいるから紹介しよう。直接話してみるといい」と言ってくれた。もちろん行くと返事をして、翌日訪ねたら、出迎えてくれ、施設や練習を全部見せてくれて、監督と話をさせてもらう機会も与えてくれた。全部マリオの運転で、グランドを見に行くときも、ずっと僕の横にいて、全部案内してくれた。初めて会ったのにそんなふうにしてくれたのは、とても嬉しかった。

マリオが言っていたのは、自分はウルグアイでいちばんいい時期に指導者として過ごしてるということだった。今までのウルグアイのサッカーの歴史上で、いちばん強い時期であり、そういう時期にこの8年間、自分がタバレス監督のアシスタントとして横でやれるのは非常に素晴らしいことだと話していた。

ウルグアイの代表チームはこの8年間で101試合やっていて、その7割がアウェーのゲームということだった。今後は、オーストリア、アイルランド、スロベニアとトレーニングマッチをやり、そしてワールドカップではコスタリカ、イングランド、イタリアと対戦することになる。

日本のサッカーについて、マリオは「すごく成長している」と話していた。あとは「サッカーをする」と言っていた。「サッカーをする」というのは、ボールをきちっと繋いで大事にする、ということで、スタイルとしてはウルグアイとは対照的なサッカーということになる。

去年、コンフェデレーションズカップで日本とウルグアイが対戦したときは、大きく点差をつけられ、最後はウルグアイは手を抜いていたようにみえ、こんなにも差があるのかと思った。これからの日本は、ウルグアイのような激しいサッカーにも対応できるようにならなければいけない。

マリオはまだ40代で、将来、監督になりたいと考えているということだった。チャンスがあれば日本でもやりたいと言っていたから、タバレス監督のような素晴らしい監督のもとで学んだ人物が日本で監督をやるということになれば、日本のサッカーにも大きな影響や変化を与えてくれるかもしれない。

現時点でマリオは、クラブチームの監督になることを希望しているようだが、タバレス監督はもう70代で、いずれは一線から退く日が来る。タバレス監督はウルグアイではもう英雄、una figura だから、タバレス監督のもとで長く下積みをしてきたということから、マリオが次期監督に指名される可能性もある。もしそういうことになれば、間違いなくウルグアイの代表監督になるだろう。

帰国してからもマリオとは何度か連絡をとっていて、ウルグアイ代表の試合があるときは顔を出してくれとも言ってくれているから、また近いうちにマリオと会えることを願っている。

今年はフォルランが日本に来て、ウルグアイのことを広く理解してもらうためにも、フォルランにはぜひ日本で成功してもらいたいと思う。マリオも、フォルランが成功することで、ウルグアイの道が開けるというふうに言っていたしね。

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