松原良香コラム“サッカー人”

松原良香コラム“サッカー人”

オスカル・タバレスさん

第86回 オスカル・タバレスさん

今回紹介するのは、ウルグアイ代表の監督を務める、オスカル・タバレス氏。

タバレス監督と直接会ったのは、2014年の3月。会える機会があったので、ウルグアイの強さの秘密、具体的に言うと、どうしてウルグアイから次々といい選手が出てくるのかということや、ウルグアイ代表の現在の状態について話を聞くことができた。

一見とても気さくで、やさしいおじいちゃんのような印象のタバレス監督だが、サッカーの話をしていると時折、鋭い目を光らせるようなシーンもある。気さくさは、あくまで器の大きさと経験の豊富さの現れであり、サッカーに関しては厳格な態度と鋭敏な感覚を持っていると感じられた。

タバレス監督の愛称は、よく知られているが「エル・マエストロ」という。「先生」という意味で、これはタバレスが実際に学校教員の資格を持っているからということもあるそうだが、「マエストロ」と呼ぶにふさわしい素晴らしい指導者だと人々に認められているからだという。

現在はウルグアイ代表の監督だが、監督としてのスタートは1980年。ベジャ・ビスタという、ウルグアイのクラブから始まった。1980年からだから、指導者としてのキャリアはもうすぐ35年になる。

現在67歳。クラブチームから始まって、そのあとはU-20のウルグアイ代表、ダヌービオ、モンテビデオ・ワンダラーズ、ペニャロールのほか、コロンビアでも監督を務めた。ほかにもマラドーナもプレーしたアルゼンチンの名門、ボカジュニアーズでも監督として優勝しているし、イタリアではACミラン、スペインではオピエドなど、監督として本当に素晴らしい経歴の持ち主である。

2006年にウルグアイ代表の監督になってからは、もう8年になる。その間に2011年にはFIFAの最優秀監督賞で5位に入り、南米の年間最優秀監督賞も、2010年、2011年に受賞している。これだけを見ても素晴らしい監督であるということがよくわかるだろう。

今はちょうどワールドカップの開催期間中なので、僕もウルグアイとは縁が深いことから、いくつかのゲームで解説をやらせてもらっているが、見ていてタバレス監督のすごさを感じるのは、今回また相手選手に噛みついてしまい、4ヶ月の出場停止処分という決定が下されたスアレスを筆頭に、個性的な、キャラクターの強い選手をひとつの集団のなかにチームとしてまとめあげていること。

その統率力は、ウルグアイが南米でチャンピオンになったり、ワールドカップで4位になったりしたことが示している。人口わずか330万人の国の監督として、チームをまとめあげ、優勝に導く。目標に向かって突き進んでいく素晴らしさ、それを実現する素晴らしさは目を見張るものがある。

それからもうひとつ、参考になりうるのは、クラブチームの監督時代からの自分のスタッフたちを、そのままウルグアイ代表のスタッフにしていて、ずっと一緒に仕事してきているというところだ。そういうスタッフたちは、タバレス監督が何をやりたいのかをよく理解しており、今ではタバレス監督を中心とした大きなファミリーのようになっている。ウルグアイの強さの大きな要因のひとつは、この「ファミリー」の存在だ。タバレス監督はこの環境を作った人物であり、それが今日の強いウルグアイのベースになっていることは間違いない。

それから、タバレス監督はトップチームだけではなく、U-17、U-20、U-23など全体を見る、言わばウルグアイサッカーの総監督のようななかたちでやっているので、世代間の連携がとれているのも参考にすべきだろう。U-17からU-20、そしてオリンピックと育ってきた選手がそのまま代表選手に入っていく、非常にいいかたちができあがっている。

ウルグアイは決して裕福な国ではないので、日本のようにトレセン制度があるわけでもなく、各クラブが選手を育てている状況。だから代表チームにつなげるためには、子どもの育成からしっかりやっておく必要があり、そこでもタバレス監督と彼のファミリーが機能している。

日本のようにヨーロッパに選手を視察に行くようなことも簡単にはできないし、サッカー協会も組織的にしっかりしていないウルグアイで、タバレス監督は、選手の家族とも仲良くなり、ケアをしている。そういう面でもファミリーは広がっている。タバレスは、選手の家族、そしてウルグアイ国民からも愛されている監督で、彼の存在は、すごいのひと言だ。

タバレス監督が僕に話してくれたことのなかで印象的だったのは、彼のやり方として、メンバーを見て、そしてチームを作っていくという話だ。理想はこういうチーム、というところから、そこにふさわしい選手を選び、方向づけをしていくのではなく、メンバーを見ながら、メンバーの長所を生かせるチーム作りしていく。それは、能力が高い個性的な選手がそろっているからこそできることだとは思うが、自然体で非常にいい方法だと思う。

今回のワールドカップでも、臨機応変にシステムを変更しながら、相手の良さを消して、自分たちの良さを出して、勝利に導くというかたちを見ることができている。スアレスがイングランド戦で2点取ったシーンなんかは、スアレスはもちろん、ほかの選手たちもそこにつながる動きをしていて、本当に素晴らしかった。自然体なチームだからこそ可能な、柔軟なタバレス監督の戦術は、イタリア戦でも成功したが、本当に素晴らしかった。

チームのまとめ上げ方、それからチームが、選手が、力を発揮するための術を知っている。そこは指導者として、本当に尊敬している。

今回は、3月に貴重な機会を得て、ウルグアイのサッカー協会の施設のなかで話を聞くことができ、本当に感謝している。自分のサッカー人生もウルグアイのペニャロールから始まったので、今後は毎年ウルグアイに行って、いろいろと勉強をしていくつもりだ。

今ここで話している時点では、ウルグアイ代表が決勝トーナメントでどうなっているのかはわからないけれども、ウルグアイの大躍進は、タバレス監督でなければできなかったこと。スアレスが出場できないという状況のなかで、それでも1回戦のコロンビア戦でベストを尽くしていること、ウルグアイの健闘を祈っている。
Vamos arriba Uruguay!


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